源氏物語を題材にした『野宮』。光源氏の能装束の色彩により、同じ演目でも雰囲気や印象が違ってくる
『野宮』は女将剣道が初めて広島市にある能楽堂で能楽鑑賞をした時の演目で、源氏物語を題材として光源氏が六条御息所に別れの挨拶に行く場面を描いているが、野宮は簡素な木の枠組みだけで表している。極限までにそぎおとした美。
上の写真の能面は秀吉が愛した『小面 (花の小面)』。室町時代に製作された能面で、国の重要文化財
令和5年(2023年)6月18日、広島県福山市にある大島能楽堂で能楽鑑賞。350名定員の観客席の90%は埋まり、料金は6000円、プラス指定席料2000円という料金設定にも関わらず、指定席に至っては満員御礼状態。和服姿の観客も数名見受けられた。男性客も多く、ここには外界とは大きくかけ離れた正に幽玄の世界が広がっている。
能楽とは式三部を含む能と狂言を包含する日本の伝統芸能の総称で、ユネスコの無形文化遺産に登録されている。歌舞伎が大衆演劇として発展したのに対して、お能は観阿弥により大系が作られて世阿弥により完成した芸術で、武家社会で愛されて江戸時代には幕府の式楽となり、非常に格式の高い芸術性が現在まで続いている。
極力動きを抑えてゆっくりとすり足で移動し、能面で顔に現れる感情表現を隠す。美しさを隠す程に美しさを感じるという高度な芸術。正に「秘すれば華」。