No. 38 南十字星



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    広島県府中市プラネタリウム

 

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     望遠鏡で月のクレーターを観測


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さそり座。赤く輝くさそりの心臓に例えられるアンタレスは、同じく赤く輝く火星に対抗するという意味で、アンチ・アーレスが転じてアンタレスと名付けられた

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     左が南十字星、右がにせ十字

 

 今から30年前の1988年から1989年にかけて、当時の内閣総理大臣竹下登の時代に全国3000超の市町村に均一、地域振興を目的に一億円が交付された。これは『ふるさと創生一億円事業』といわれ、使い道は自由であった為自治体によっては純金製のこけしや、かつお・しゃちほこ等のオブジェが作られ、まさにバブル狂乱の世であった。

 広島県府中市では市民のアンケートの結果プラネタリウムが作られたが、2018年3月に建物老朽化に伴い閉館。天体愛好家を随分悲しませたが、女将剣道もその一人。女将剣道は数え切れない位通い詰めたし、観客が一人の時にはオペレーターはプログラム以外の女将剣道のリクエストに応えて、太陽が輝いている時間帯の決して見れない星座をみせてくれた。クアラルンプールで最初に訪れ、何回も通った所も国立天文台に併設されたプラネタリウムだった。

 イスラム世界のプラネタリウムは面白い。荘厳な雰囲気でコーランの一節が流れる中、目が回る位の速さで太陽がぐるぐると何周も天を駆け巡り、それが毎回のお決まりでプログラムが開始する。

 クアラルンプールの夜空にはプラネタリウムでしか出会った事のない星座が煌めき、日本からだとさそり座の心臓にあたるアンタレスは、南の空の地平線近くで赤く輝いているのに、クアラルンプールでは天上高く輝き天体好きな者でなくてもすぐに見つける事ができた。りゅうこつ座カノープスこそ日本からだと南の地平線近くにあり過ぎて、南中時間も20分と短く滅多に観測できない。だからシリウスに次いで全天で2番目に明るい星にも関わらず、この星と邂逅できたら長生きできるといわれているのだが、クアラルンプールでは日常茶飯事でお目にかかれた。

 だが、南十字星を見つける事は難しかった。全天で88ある星座の中で一番小さい星座であるし、すぐ近くに本物より大きな「にせ十字」があるためだ。更にいまや大都会になったクアラルンプールの空は、さほど明るくないこの星座を見つけるには明る過ぎたし、乱立するビルが夜空の視界をさえぎった。畢竟、初めて実物の南十字星に出会えたのはバリ島で。

 女将剣道が思わず発した言葉が「有名な割には小さいんだなぁ」